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はじめに|気候変動で変わる暮らしの前提
ここ数年、夏が「暑く、長く、終わらない」と感じることはありませんか。
そして、その影響で「夜間の寝苦しさで睡眠の質が下がっている」「9月に入っても冷房が手放せない」——といった声が、確実に増えています。
この“変化”は、一時的な現象ではなく、暮らしの設計思想を根本から見直すべきシグナルです。
本稿では、気候変動が暮らしに与える具体的な影響と、そのなかで住宅に求められる役割の変化について考えていきます。
1.気温上昇が「暮らしの内側」に及ぼす影響
ハーバード大学などの研究チームが世界68か国の睡眠データを分析した調査※1では、夜間の気温上昇が入眠の開始を遅らせ、睡眠時間を短縮させることが統計的に確認されています。
屋外の夜間平均気温が25℃を超えると屋内には熱がこもり、屋外以上に高温になりやすく、その結果、1晩あたり平均約14分の睡眠時間が失われるという調査結果が出ています。
こうしたデータが示すのは、暑さの影響が単なる“外の気候”にとどまらず、睡眠・健康・生活の安心感といった“暮らしの内側” に影響が出ていることの裏づけです。
2.「断熱」はもはや、“命と生活”のインフラである
注文住宅業界で言えば、気温上昇が“暮らしの内側”にまで深く入り込んでいる現状を前提とすると、住宅に求められる役割も大きく変わります。
「9月なのに猛暑日」「朝から熱中症警戒アラート」——そんな異常が日常になった今、私たちは“季節感”と“現実の気温”との乖離に真正面から向き合わざるを得ません。
しかし、人の身体や生活リズムには限界があります。
今の暑さは単に「我慢すれば済む」ものではありません。
こうしたリスクを和らげるには、暮らしを守る「器」としての住宅性能が大きな意味を持ちます。
その中心にあるのが、“断熱性能”です。
十分な性能がないことで「暮らせなくなる」リスクが現実化しつつある今、断熱はもはや「快適のための付加価値」ではなく、性能の有無が健康被害や経済的損失、生活機能の低下と直結している、 “命と生活を支える社会インフラ” に変わったのです。
3.断熱性能の再定義
しかしライフラインにとって、断熱性能はそれだけ重要であるにもかかわらず、未だに「こだわり」や「オプション」として扱う風潮も根強く残っています。
一方で、性能の高い住まいを「余計なコストのかかった家」と見るのではなく、安心感や将来への備えを手に入れるための“損失回避への投資”と捉える認識も広がりはじめています。
その変化を後押ししているのが、住宅性能表示制度やZEH関連の税制優遇・補助制度です。
国がこうした制度を整備してきた背景には、エネルギー消費量の削減や室内環境の改善という課題があります。
そのため「断熱等性能等級」や「一次エネルギー消費量等級」といった指標を設け、住宅の性能を客観的に示す仕組みを導入しました。
これにより、省エネ性能や快適性を分かりやすく比較できるようになり、制度そのものが住宅ローン減税や補助金といった支援策の基盤にもなっています。
さらに、その延長線上には「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)」という国家的な長期目標があり、住宅分野の性能向上はその実現に不可欠とされています。
実際、性能表示制度の交付件数は2019年度に新築着工の約3割に達し、住宅を“性能で比較する土壌”が整ってきました。
そしてこの目標を具体的に進める施策として、2025年4月以降は新築住宅において断熱等性能等級4以上の適合が義務化され、性能を前提にしない住宅は市場で選ばれにくくなっていきます。
そして義務化により、品質が均一化された今、次に問われるのは、工務店やハウスメーカーによる“強みとして語る力/説明力”です。
4.設計・営業に求められるのは、「感度」と「説明力」
現場にいま最も問われているのは、「感度」と「説明力」です。
性能や等級をただ並べるだけでは、顧客の納得は得られません。強みとして語れない提案は、比較の中で埋もれ、最後は価格だけの競争に沈んでいきます。
「良かれと思って選んだ」「これくらいで十分だろう」という姿勢も、もはや通用しません。断熱や性能の背景にあるリスク──睡眠の質の低下、健康被害、光熱費や将来の負担──を顧客と共有し、その上で仕様を示さなければ、信頼は得られないのです。
従来の“売り方・伝え方”は、いまや静かなリスクに変わっています。説明力を欠いた提案は「根拠のない押し売り」と受け止められ、企業全体の信用を損ないます。市場はすでに、「説明できない仕様は、選ばれない」という基準に移行しています。
これから必要なのは、「暮らしへの影響」を起点にした伝え方です。
例えば「この仕様なら、真夏でも寝苦しさが和らぎ、翌日の集中力を保てる」「将来の光熱費が一定に抑えられ、家計の安心につながる」といった具体的な体験像です。お客様は“自分の生活にどう影響するか”を知りたいのです。
そのためには、担当者が生活者の声に敏感に反応し、設計がそれを根拠ある仕様に落とし込む──この往復を仕組みとして定着させる必要があります。単なる知識の提示ではなく、「なぜこの仕様を選んだのか」を一貫して説明できる体制が信頼を生みます。
感度と説明力を備えた企業は、「暮らしを守る会社」として選ばれ続ける。逆にそれを欠いた企業は、顧客から静かに外され、市場から淘汰されていく。
いまの住宅市場は、その分岐点にあります。
だからこそ企業に問われているのは、「暮らしを支える説明力」を武器にできるかどうか。そこに、未来の住宅市場で生き残る方法があるのです。
5.まとめ|住宅は“贅沢”ではなく、“社会基盤”として問われている
ここ数年の“長引く暑さ”は、すでに私たちの睡眠・健康・日常生活にまで影響を及ぼしています。
そのなかで断熱性能は、「快適のための付加価値」ではなく、暮らしを守る前提条件へと位置づけを変えました。
高性能はこだわりではなく、ライフラインを守る前提です。
健康や経済負担、日常の安心に直結する社会的インフラであり、その設計思想や企業姿勢は、生活者からの信頼、さらには社会的評価に直結します。
問われているのは、単なる性能値ではなく、担当者自身が説明し、納得を得られるかどうかです。
未来の住まいづくりは、目の前の違和感や不安に応えることから始まります。
その姿勢を持って答えを語れる企業こそが、「選ばれ続ける存在」になれるのです。
<出典元>
- ※1:Minor, K. et al. (2020) 「Ambient heat and human sleep: the role of climate, income, and demographics」
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